カミさま仕事 1 夜明け前の音
夜明け前に聞こえてくる音は優しい。
まだ、世の中は眠りについていて、
日常を動かす音が聞こえてこないからなのか…
周りを起こさない様に気遣いながらそっと動くからなのか…
自分の意識がクリアだから、いつもは通り過ぎる微細な事に気づくからなのか…
ビックリするほど早い時間なのに、毎朝ご機嫌な新聞配達の女の子の鼻歌
突き当たりのお寺さんの門前を箒で掃除する音
いつもは聞こえない遠くの踏切の音
なんだか愛おしくなるほど優しく聞こえてきます。
そんな優しい音が身体にまとわりつく様に遠くから近づいてきて、ゆっくりと目覚める朝。
「あぁ、寝ていたんだった」
「そうだこの身体の中にいたんだっけ」
と、大好きなマットレスと肌触りの良い布団に包まれて置いておかれた身体に挨拶しながら、
シャバアーサナの録音をオンにして、ギシギシした身体を解きます。
そして、スリッパがわりのゴムサンダルを履き、足音を忍ばせながら、まだ真っ暗な台所に向かいます。
小さな灯りをつけて、
先ずは、浄水器から「トックトック」と水を汲み、
きっちり600ミリリットルを確認して、「コポコポ」とゆっくりと土瓶に注ぎます。
そこに調合してもらった1回分の漢方薬の紙袋を「サクッ」と開けて「サラサラ」と投入。
「ジュジュッ」と煮立つのを待って、そこから40分。
弱火にして「コトコト」煎じます。
その間に歯を磨いて顔を洗って、天気予報をチェックしながら洋服を選んで。
もちろんお水ユラユラ体操も忘れずに。
でも、同じ火加減にしてもなぜだか毎日出来上がりの量が変化するので、
何回かご機嫌伺いをしなければなりません。
日によって木片は元気に循環していたり、静かに沈んだまま煎じられていたり、
その様子によって火加減を調整するのです。
こうして大切に手を入れて出来上がった煎じ薬を
網で漉しながらお気に入りの桜色のポットに「トロリトロリ」と注ぎ入れ、
それを啜りながら1日を始めます。
このプロセスで生まれる音が何とも優しく、薬効を何倍にもしてくれるように感じてしまうのです。
「40分も様子を見ながら煎じる?」
若い頃のわたしは、何よりも効率を重んじていたので、
手っ取り早い西洋医学のお薬を迷わずに選択していたでしょう。
いえいえ、選択していましたとも。
効かなければ倍量飲む勢いで。
しかし、歳と共に、効率的な生活も西洋医学のお薬もしっくりとこない事が多くなり、
こうして丁寧に漢方薬を煎じるように、
大きな刺激よりも微細なものを楽しむ生活をありがたく大切に感じるようになりました。
もちろん歳を重ねた事も大きいのですが、
いま、わたしの生活は、
「カミさま仕事」が中心になったからです。
あぁ面倒くさい
大変だ
やりたくないなぁ
という心の声すら効率が悪くなるので、耳を貸さず、
「それって、役に立つの?」
という「効率第一自分仕事」の世界から、
「カミさま仕事」へ。
何故だか悩みもなくなりました。
「カミさま仕事」をしていると、悩みがスーッと消えていくのです。
逆に考え込むことは、「カミさま仕事」を疎かにしている時なので、自己修正も楽です。
と言っても、誤解しないでくださいね。
人の形態をとった神様からの啓示による仕事ではありません。
(物語の中で依頼はある)
でもね。
漢方薬を煎じるのも、
床拭きをするのも、
「物語」から出た時、
実はこの世で一番大切な「カミさま仕事」となるのです。
クラススケジュール
http://blueprintjapan.com/archives/info/057
team0x's blogより転載